中古車トラブル事例
【相談内容】中古車購入時の諸費用について
自動車を購入する際、諸費用を請求されましたが、どういうものが諸費用であり、どういう基準で金額の算定がされ、また支払う必要があるのでしょうか。
【回答】
合理的な範囲の諸費用は支払うべきものと思います。
しかし、販売店は、これらの業務を販売店がユーザーに代わって行うこと、その業務の内容、必要性、費用を徴収することなどを事前に説明して了解を得ること、及びユーザー自身が諸手続きを行うことができる旨も併せて説明することが必要です。
また、販売店は、注文書を作成・交付する際には、「特約事項」として支払いや引渡し等のタイミングやお互いの責務について書かれていることを説明する必要があるでしょう。
【解説】
諸費用の中身
諸費用には、車両検査登録手続代行費用、車庫証明手続代行費用、納車費用、下取諸費用など本来ユーザー自身が行うべき仕事を販売店がユーザーに代わって行うもの及び査定料などその自動車の取引きに付随する業務について車両価格に含めない費用をいいます。
そして、ユーザーの依頼で行う手続き代行業務としては次のものがあります。
- ① 検査登録(届出)手続代行・・・自動車の検査・登録(届出)業務の代行(申請書の作成を除く)
- ② 納車業務・・・・・・・・・・・ユーザーの指定する場所まで納車する業務
- ③ 車庫証明手続代行・・・・・・・ユーザーの車庫証明を取得する業務(申請書の作成を除く)
- ④ 下取車手続代行・・・・・・・・クレジット会社または他の販売店等の所有権留保の解除手続き業務
下取車手続代行(下取車諸費用等)は、上記のとおり、クレジット会社や他の販売店の所有権留保車両を下取り、その所有権を解除する手続きを代行する際に請求できる費用です。受益者負担の観点から下取車を自社名義にする費用は、新所有者となる販売店が負担すべき費用で、販売する車両及び所有権留保登録されていない下取車の双方の名義変更費用をユーザーに請求することはできません。
なお、諸費用として適切ではないと思われるもの(「車両価格」に含まれるべき性質のもの)としては次のもの(名称の如何問わず)があります。
・納車前の洗車、クリーニング、ワックスがけ等、販売店が自動車を販売するにあたり当然行うべき作業にかかる費用(例:納車準備費用)
・納車前の点検、オイル交換、バッテリー交換等、納車前に最低限必要な点検・軽整備※の費用や、実施が販売条件である軽整備等の費用(例:納車点検費用、納車整備費用等)
※現状販売の場合であっても、不具合等の有無を確認するための「点検(チェック)」の実施は必須です。
・その他、そもそも販売する自動車の車両価格に含まれるべき性質のもの(例:販売手数料、広告掲載料、利益等)
諸費用算定の基本的な考え方
1977(昭和52)年12月27日付けの通商産業省(現:経済産業省)自動車課通達は諸費用について次のとおりにすべきだとしています。
- ●登録、納車など自動車の販売に伴って行う業務であって、販売(現:車両)価格ではカバーされない費用の徴収については、法定費用及び人件費、交通費などで当該業務の実施に必要とする直接経費(検査登録申請書類、車庫証明申請書の作成費を除く)に限ることとし、その額は各社の実態に即して合理的に算定されたものとすること。
- ●各種業務に関する費用を一括徴収することは、自動車購入者の誤解をまねくおそれがあるので、費用の徴収にあたっては登録、納車、車庫証明、下取及び査定の項目ごとにそれぞれ区別し、購入者にあらかじめ明示するとともに、必要に応じ算定根拠などその内容について説明し、了承を求めること。
諸費用の算定と表示方法
諸費用は、基本的には時間当たり人件費(アワーレート)と業務に要する行動時間を用いて算定します。アワーレートは販売店ごとに異なるため、同じ費目であっても費用の額は販売店ごとに異なるのが普通です(独占禁止法上も価格協定は禁じられており、統一額の設定はできません)。
なお、業務に要する行動距離・時間などは、現実には販売店とユーザー及び手続先との距離や道路の渋滞度などによって個別に異なるのですが、個別計算は煩雑かつ困難なため、費目ごとに全体をプール計算し、一定額とすることも合理的とされています。
以上のことから、諸費用の表示方法について業界では次のように指導がなされています。
- (1)諸費用各項目は、諸手続などに要する代行活動費用である旨の説明をする。
- (2)「〇〇手続預り法定費用〇〇円」等と手続費用と法定費用を区分し明記する。
- (3)行政書士料とは明確に区分する。
- (4)ユーザー自身が諸手続きを行うことができる旨の説明をする。
- (5)一括請求しない(費目ごとに表示する)。
- (6)査定料を受領したときは、査定証を交付する。
- (7)注文書などの諸費用の欄には金額を印刷しない。