中古自動車売買に関する基礎知識

契約の「無効」、「取消」、「解除」と「キャンセル」

 契約の「無効」、「取消」、「解除」の違いについては法律により定義されており以下の通りです。

  • 「無効」:契約そのものがはじめから存在しなかったということ
  • 「取消」:契約が存在しているが、それを意思表示により無かったことにすること
  • 「解除」:意思表示をすることでその契約を無かったことにするもしくはその契約を将来にわたって解消することを意味し、それまでの契約は有効になるということ

※無効、取消はいずれも販売店はいかなる請求もすることはできません。

 次に契約の「キャンセル」とはどのようなものかを考えてみます。法律に「キャンセル」の定義はありませんが、一般的に上で述べた契約の無効、取消、解除といった意味合いで使われていることが多いと思われます。自動車販売における注文のキャンセルは大きく分けて二通りあります。

1. 契約成立前のキャンセル

 正式には「申込みの撤回」と言われています。契約は成立して初めてお互いに義務権利が発生しますので、成立前では互いに義務権利は発生しておらず、仮に標準的な注文書での申込をした場合には、サインや押印をして一時金を支払っていたとしても相手に了解をもらわずに購入をキャンセルすることができます。この場合支払った一時金の返金を当然に求めることができます。しかし、購入者が販売店に対して納車を急ぐように要求し、車の整備や改造の手配、書類の手続きが進んでしまい、キャンセルに伴う販売店の損害とみなされる場合はその費用を支払う必要があります。

2. 契約成立後のキャンセル

 こちらは既にお互いに義務権利が発生していることから、契約で定められた債務を履行しないなど法律が定める要件をみたす場合に限り、キャンセルにはお互いの合意が必要となり、申込みの撤回のように一方的にキャンセルを申し入れて終了させることはできません。なお、注文書に「キャンセル不可」と記載されていても合意がなされれば合意解除となりキャンセルは可能ですし、そもそも契約で定められた債務を履行しないなどの場合は債務不履行で法定解除となります。

 このようにキャンセルといっても使用している注文書の内容や契約の進捗状況により内容は様々ですので、申込の段階なのか、契約成立後の段階なのか、販売者に損害が生じているのか等、色々な要素が関係してくるので、きちんとヒアリングすることが重要です。

 なお、注文書の表面に「キャンセル不可」、「本契約となりますのでキャンセルは一切できません」などと記載されていることがありますが、これが契約成立後の債務不履行解除などを制限していると解釈される場合は、消費者契約法8条の2によりそのような条項は無効とされています。
 どのタイミングでのキャンセルかが明示されておらず不適切な表現である場合は是正するよう指導しましょう。
 また、未成年者の契約行為は、両親・法定代理人の事前の同意がない場合には契約を取り消すことができるとされています(民法5条)。判断能力が欠けているのが通常の状態で成年後見人登記がされている方が行う契約行為については、成年後見人が代理して行うものとされており、成年被後見人自身が行った契約行為は日用品の購入その他日常生活に関するものである場合を除き、取り消すことができるとされています(民法9条。ただし、成年後見人が事後的に追認(同意)した場合は取り消されません(民法122条)。)後見登記等がなされていない成人や認知症の疑いがある方などの契約行為についても、意思能力を有していないと判断された場合は、契約は無効となります(民法3条の2)。
 なお、近年は高齢者による契約でのトラブルで、高齢であることを理由にその親族から契約キャンセルを要求される事例が散見されます。販売店としては契約者(購入者)に対して「契約者が高齢である」という理由で契約の申込みを断ることは難しいですし、契約者に対して契約当事者ではない第三者の家族から了解をもらっているかなどと聞くことは通常はできません。
 しかしながら、後にトラブルが起こらないようにするためには、当事者の家族等に自動車を購入するにあたってのご希望について話を聞いてみる等、できる範囲で対応することが必要かもしれません。