中古車トラブル事例
【相談内容】購入した中古車が「修復歴車」だった
- 相談① 購入直後からハンドルをとられるため、近くの修理工場で見てもらうと、修復歴車であることが分かりました。この車では危なくて乗れないのでキャンセルできないでしょうか。
- 相談② ガソリンスタンドでオイル交換をした際、修復歴車であることを指摘されました。販売店にこの旨を伝えると「保証期間が過ぎているので応じられない」と言われました。修復歴車であることを告げずに販売しても、保証期間が過ぎた車はクレームを申し出ることはできないのですか。
【回答】
相談① 購入直後からハンドルをとられるため、近くの修理工場で見てもらうと、修復歴車と判明。この車では危なくて乗れないのでキャンセルできないか。
自動車公正競争規約でコンディションノート等に表示を義務付けられている修復歴を表示せず、隠して取引きしたのであれば、そのような修復歴は取引上重要な意味を持つので、ハンドルが取られるか否かと関係なく、契約の取消しを主張されても当然であり、販売店はこれに応じる必要があります。
相談② ガソリンスタンドでオイル交換をした際、修復歴車であることを指摘されました。販売店に伝えると「保証期間が過ぎているので応じられない」と言われた。修復歴車であることを告げずに販売しても、保証期間が過ぎた車はクレームを申し出ることはできないのか。
自動車公正競争規約で定義されている部位についての修復歴があるならば、保証期間とは関係なく、相談①の場合と同様の考え方で対処されるべきです。
なお、契約不適合責任で損害賠償請求や契約の解除等を主張する場合、原則として、不具合があることを知ってから1年以内にクレームを主張する必要があります。
【解説】
売買における問題
事故による損傷が目視でき、それを現状販売したときは、原則として販売店の責任はありませんが、事故による不具合が明示されていないときは、販売店は民法の契約不適合責任により、その不具合の修理義務を負い、その不具合の修理を行わなかったり修理不能で安全走行に支障をきたすときは契約を解除されることになります。
錯誤・詐欺による取消し
自動車公正競争規約で表示を義務付けられている修復歴の場合は、たとえ修復され性能に異常が認められなくなっていても、当該自動車に対する安全性への信頼が著しく損なわれることになります。
したがって、その修復歴はユーザーにとって取引における重要な要素と考えられます。そこでこのような修復歴が表示されていなかったため、それを知らないで契約したユーザーは、契約不適合責任の追及のほか、民法95条の錯誤による取消しを、また販売店が修復歴を故意に隠していたときは民法96条の詐欺による取消しにより契約の効力をなくすことができます。
販売店の責任
修復歴車であっても、販売時にその旨を表示し、ユーザーが承知の上で購入したものであれば問題は生じませんが、そうでない場合には故意に表示しなかったかどうかに関係なく、車両状態の内容により次のような対処が必要になります。
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a. 事故の後遺症で走行機能に異常があるもの
走行機能に異常があるものは事故の未復元車の扱いとなりますので、販売店の責任で直ちに正常な状態に復旧・修理するべきです。なお、復旧できないときは自動車を回収(解約のうえ売買代金を返還する)する以外にありません。 -
b. 走行機能に異常がないもの
事故痕跡のため商品価値の著しい低下が見込まれるものについては、商品価値の低下を補償するか、ユーザーが車両交換を希望する場合には、一旦契約を解除した後、改めて新しい取引として他の自動車を提供するなどの対処が必要と考えます。
修復歴の定義
自動車公正競争規約施行規則第14条
規約第11条及び第12条に規定する「修復歴(車体の骨格に当たる部位の修正及び交換歴)」とは、販売する中古自動車について、次に掲げる車体の骨格に当たる部位を修正及び交換することにより復元されたものをいう。
- ① フレーム(サイドメンバー)
- ② クロスメンバー
- ③ フロントインサイドパネル
- ④ ピラー
- ⑤ ダッシュパネル
- ⑥ ルーフパネル
- ⑦ フロアパネル
- ⑧ トランクフロアパネル