中古車トラブル事例
クレジット販売と契約の成立
Aさんは100万円で中古車を購入することにし、10万円を支払いました。残金90万円はクレジットを組んで支払うことにし、販売店がその手続きをとりましたが、クレジット会社の調査の結果、承認が不可となりました。
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①
この場合、販売店は別の方法を講じても残金90万円を支払えとAさんに要求できるのでしょうか。 -
②
クレジット承認不可の理由が、Aさんの保証人に信用がないことによるものであった場合、販売店はAさんに別の信用のある保証人を立てるよう要求することができるのでしょうか。 -
③
この場合、契約が不成立になったと主張してAさんが10万円の返還を求めた場合、販売店はこれに応じなくてはならないでしょうか。 -
④
販売店はAさんの要望により、クレジット承認前に自動車の整備とナビゲーションの取付けをしてしまいました。クレジット不承認の場合、Aさんにその費用を請求できないのでしょうか。
設問①について
売買契約が不成立ですから、別の形で残金支払い手段を講じるようにAさんに求めることはできません。
設問②について
クレジット契約を申込む際にAさんがある保証人を立てた場合でも、それは「その人で審査が通るなら」という前提で立てられたものにすぎないと見るのが普通ですから、改めて別の保証人を立てることを要求する権利は販売店にはありません。
設問③について
クレジットの不承認によって売買契約そのものが成立しなかったのですから、販売店はAさんに10万円を返さなくてはなりません。この場合、10万円の支払いの名目が着手金となっていても同様です(手付金については設例4-1-5参照)。
設問④について
整備やナビゲーション取付依頼は自動車売買契約とは別個の契約に関するものですが、それも自動車の売買契約が成立することが前提となっており、売買契約が不成立であれば、整備及びナビゲーション取付契約も当然に不成立になるか、ユーザー側からの申込みの撤回が許されることになります。したがって販売店はAさんにその費用を請求することはできない理屈になります。
もっとも、中販連が監修、準拠確認している自動車注文書では、このような場合に販売店はユーザーに実費を請求できると特に定めています。したがって、この注文書を用いて、設例の申込があった場合には、販売店はAさんにその費用を請求できることになります(なお、法定点検整備費用や一般的な軽整備は、他の販売機会に転用できる性質のもので請求できないと考えることが妥当です)。
また、新品のナビゲーションを取り付けることで、当該ナビゲーションが中古品となって値下がりした場合は、その値下がり分を請求できると思われますが、どの程度値下がりをしたかを資料・明細を消費者に示す等して丁寧に説明する必要があるでしょう。
ただし、ユーザーの了解なしに勝手に着手した上で、仮にキャンセルを受けてしまった場合には、実費損害があったとしても販売店が勝手に作業を進めたとして請求を拒まれても仕方ありません。整備及びナビゲーション取付に着手する場合は、ユーザーにきちんと連絡した上で作業に取り掛かるようにしましょう。