中古車トラブル事例
【相談内容】保証なし・整備なし(現状渡し)販売で購入した中古車の不具合について
購入直後、オイル漏れが発見され、販売店に無償修理を要求すると「この車は現状販売なので修理は有償になる」と言われましたが、納得できません。無償修理を要求することはできますか。
【回答】
販売店が通常の方法で品質チェックすれば容易に発見されるようなオイル漏れについては、コンディションノート等にその旨を表示するとともにその事実をユーザーに説明し、ユーザーが納得して購入していれば有償修理で良いことになりますが、売買契約時点ですでに発生していたオイル漏れを販売店が見落としていた場合、またはオイル漏れの事実を説明しなった場合には無償で修理に応じなくてはなりません。
【解説】
中古自動車の品質
中古自動車はそれまでの使用・管理状態によって、その性能は千差万別です。そこで、ユーザーがその性能を判断する資料として自動車公正競争規約によって車歴、走行距離などの品質の表示が販売店に義務付けられています。中古自動車は新車と異なり、前使用者の使用状態や経年によって、相応の機械疲労(自然損耗)があることは一般常識として知られています。このことからユーザーは、中古自動車には自然損耗が原因となる不具合が生じる可能性があることを承知して中古自動車を購入していると見做されます。
よって、特に販売店が保証している場合以外は、通常の自然損耗による不具合について販売店は責任を負う必要がないことになります。
しかし、割賦販売法施行規則は、契約約款の基準として「商品に隠れた瑕疵がある場合に割賦販売業者が当該瑕疵について責任を負わない旨が定められていないこと」と規定して消費者の保護を図っています。
また、消費者契約法でも、事業者の損害賠償等の責任を免除する条項の無効が規定され、消費者に不当な負担を強いることを防止しています。
中古自動車の不具合による契約不適合
中古自動車に当然予想される通常の自然損耗とはいえない不具合があり、販売店もユーザーもそれに気付かずに売買が行われ、後に不具合が発見されたときは、いくら現状渡し販売といってもその損害をユーザーに負担させることは不公平です。
そこで民法は、売買の目的物が契約において予定された品質に適合しないときは、契約内容に適合しないものとして、ユーザーが販売店に対し追完(修補)請求、代金減額請求、損害賠償請求、売買契約を解除する権利を認めています。
これは契約不適合責任といわれ、販売店がその品質が契約に適合しないことを知らなかったとしても責任を免れません。そして、消費者契約法において事業者の損害賠償等の責任を免除する旨の規定は無効となりますので、販売店は現状渡し販売においてもこの責任を避けることはできません。
保証なし・整備なし(現状渡し)販売
中古自動車を現状のまま販売するという取引形態の場合には、①販売時に自動車公正競争規約に基づいて品質表示を適正に行うこと、②現状渡し販売の取引形態であることをあらかじめユーザーに説明していることが必要です。
しかし、いくら現状渡し販売であっても、契約に適合しない不具合については売主の契約不適合責任に基づき販売店は無償修理などに応じなければなりません。
標準契約約款の特約事項
JUモデル注文書「中古自動車の不具合と保証」についての条項は、以下のように定められています。
「車両が中古自動車である場合、プライスボード、特定の車両状態を表示した書面もしくは整備明細書に記載された前使用者の使用の態様(走行距離等)から通常生じる不具合については、注文者は一切異議を述べないものとします。
ただし、保証書が添付されている場合には、その範囲で保証が受けられるものとします。」